本格的に韓国縦断を始める前に、ソウル市内で寄り道をしました。
大学の学食に行ったり、下町で飲み歩いたり、少し変わったソウルの風景を楽しめます。
普通の観光ルートとしては参考になりませんのであしからず。
目次
前回までのあらすじ
前のお話:【韓国】ソウルからプサンまで半島縦断途中下車の旅。仕事終わりの強行軍にサクララウンジの食事がありがたい。
仕事終わりは夏休みの始まりです。
いつもの通り羽田空港へと直行し、デルタAMEXゴールドカードの特典で、ラウンジにお邪魔しました。
金浦空港に降り立った後は、ソウル市内の安宿に転がり込んで一夜を明かすことにしました。
2日目:ソウル市内探索
旅日記
※2018/9/2現在 1KRW(韓国ウォン) = 0.0961JPY(日本円)
旅の軌跡
08:00 起床
窓辺から聞こえる雨の音に気付いたのは朝の8時頃でした。
カーテンがない代わりに、窓が2重構造になっており、ぼんやりとした光が室内を照らしていました。
夜中にGに襲われた形跡もなく、スッキリとした目覚めです。
夜中に風でガタガタいっていたようですが、全体的に静かなものです。台風だと聞いていましたが。
08:45 ヨンセ大学校へと出発
本日はシンチョンにある有名な大学にお邪魔することにしました。
朝のシンチョンには祭りの後の静けさが漂っています。
09:00 ヨンセ大学校到着から散策まで
宿所から大学までは目と鼻の先です。
夏期講習目当ての学生たちに交じって、軽く通学気分を味わえました。
山一つ分の敷地があるので、散策のしがいがあります。
もはや公園なのか大学なのかよくわからない状態です。
そうかと思えば歴史的建造物が姿を現したり。
きれいに手入れされた庭園があったりします。
博物館まであります。
漫画でよく出てくる、巨大な学園都市のようです。
「真理が汝を自由にするだろう」と石碑に書いてあります。
本大学の標語で、新約聖書の引用ですが、当時ひねくれものだった私は、「真理など、誰かの心を縛るためのものだ」と思っていました。
大学の創業者、アンダーウッド牧師です。
アメリカからの宣教師で、熱心な伝道者だったとされます。
ツタに覆いつくされた石造りの館に歴史を感じます。
ここが大学の始まりの地だったのです。
果てまでいくときりがないので、この辺でぐるっと折り返し、文化大学方面から下へ降りていきます。
上の写真の建物は、この坂を上ったところにあります。
誰が呼んだか「ゴルゴダの坂」とはよくいったものです。
遅刻殺しの急坂路として、学生たちに恐れられていました。
出前のバイクがよく走っていましたが、通行禁止となった模様です。
少し寄り道した丘の上には露天劇場があります。
意志に刻まれた名前は、かつて人柱となった英霊たちの碑……ではなく、工事費用をカンパした卒業生たちの名前です。
上から見ると、大学中が見渡せて気持ちいです。
市内のほうまで見えますね。
この辺で、学食が空くはずなので、山道を降りていくことにしました。
11:00 学生会館の学食で食事
中央図書館の向かい側には学生会館があり、学生たちの食を支えています。
私の知っている頃よりも、ずいぶんと小ぎれいになったものです。
食券機でもカードが使えます。むしろ、カード以外使えないそうです。
学食のメニューは見ているだけでワクワクします。
食券を買うと、呼出し番号で呼んでくれるようです。
昔は、直接列に並んだものですが。
メインのおかず以外は、全部サービス品です。韓国らしいですね。
トラベルグルメレーティング【#001】 ヨンセ大学校学生食堂のビビンバ
- 味:★★★
- 栄養:★★★★
- 安さ:★★★★
- ニッチ度:★★★★★
- 思い出度:★★★★★
総評:★★★★
コメント:一食頼めばおなか一杯間違いなし。サイドのおかずもあなどれません。大学と関係ない人も結構きているので、あなたもニッチ飯にチャレンジしてみては?
11:30 裏庭の教会で一休み
ミッション系の大学だけあって、敷地内に教会があります。
日本人にはなじみがないですが、祈祷室もあります。真っ暗になっているアレですね。
祈祷室で昼寝をするのは恐れ多いので、私は食事後、よく教会の硬いベンチで昼寝をしていました。
時折扉の向こうからパイプオルガンの音色が響いてくるのが心地よいです。
トイレを借りると、トイレットペーパーは便器に捨ててくださいとの表記が。
昔の話ばかりしますが、かつては便器にトイレットペーパーを流せず、横のゴミ箱に捨てるのが韓国式だったのです。
12:00 記念品売場でお土産選び
大学の購買部で、本から雑貨に衣類、はたまた記念品まで幅広く取り扱っています。
写真右のジャンパーは、ヨンセ学生のトレードマークです。
分厚い牛革を使用しており、冬でも非常に温かいです。
高品質な割に5万ウォン以下なので、お求めやすいです。
ありきたりなお土産にあきたらここで選ぶのもよいでしょう。
一雨きそうだったので、ここで傘を買いました。
12:30 バスに乗ってクァンファムン(光化門)広場へと
ソウルはバスのネットワークが非常に発達しており、地下鉄との連結も最高です。
共に市営であるメリットがこれですね。
民営化も競争の観点からするとよいのですが、インフラ同士のシナジーという点で見ると、都市部交通手段は公営がいいんじゃないかと思います。
道路開発など、制度と直接連携できる点も、スピード感があってよいですよね。
今のソウルではバスの通行は中央車線が主ですが、これも10年ほど前から道路を大々的に作り変えた結果です。
ともかく、ヨンセ大学校の前から市内中心部であるクァンファムン方面には、バス一本で行けます。
KakaoMapをインストールすると、路線検索が楽でしょう。
韓国のWebマップ事情は、ガラパゴス化しているため、ほぼカカオ一択です。
交通カードなら1,200ウォンですが、現金だと1,300ウォンです。
T-Moneyカードを手元に用意してから乗りましょう。
13:00 セジョン(世宗)大王の銅像から地下博物館へと
バスでおよそ15分、キョンボックン前のバス停で降りました。
キョンボックンには前回行ったので、今回はクァンファムン広場を目指すことにしました。
史跡の路地を南に入って
ソウル市警の隣を通って
全体的に南東へ行くとセジョン文化会館が見えます。(適当)
まあ、コンパスがあれば迷わないでしょう。
向かい側の広場には、セジョン大王の銅像がそびえたっています。
写真だとよくわからないと思いますが、北側が宮殿で、両脇は道路になっています。
つまり、セジョン大王は往来のど真ん中に鎮座しているわけですね。
平日の昼間にもかかわらず、観光客が多数いました。
セジョン大王は、韓国文字であるハングルの創始者として知られています。
台座には、ハングルの始原となった文字が並んでいますが、現在もほぼそのまま使われています。
王様の背中に回ってみると、ちゃっかり博物館の入口がありました。
無料観覧とのことで入ってみます。
広場の敷地と同じ面積の地下空間があるため、非常に広くコンテンツが充実しています。
拓本のコピーをもらえます。資料として優秀ですね。
博物館内には小ぶりながら図書室まであります。
入ったら一日つぶせるのではないでしょうか。
お隣には、これまた朝鮮時代の英雄とされる、イ・スンシン将軍の博物館があります。
海戦の名手で、豊臣秀吉の朝鮮出兵時に立ちはだかった将軍ですね。
やはり、韓国では英雄視されています。
そろそろおなかもすいてきたので、見学もそこそこにクァンファムンの地下鉄駅へと降りていきました。
14:00 ウルチロ四番街駅で下車
この日は、とある市場でお目当ての食事があったので、現地近くのウルチロ四番街の駅でメトロを降りました。
ここで、同じ乗客のおばちゃんに道を尋ねられました。
私はソウル市民ではないのですが……といいたいところでしたが、困っていそうだったので、何とか道を調べて案内できました。
ソウルの地下鉄には駅員がいないのでこういったことが起こるのでしょうね。
結果的に、市民同士で助け合って解決するようでしたら、それはそれでいいと思います。
14:30 クァンジャン市場到着
クァンジャン市場という、トンデムン市場横の市場へとお邪魔しました。
南側からだと、このようなゲートが入口にあります。
主に衣料品のコーナーと、食事どころがありますので、食事処へと進みます。
市場巡りは韓国の醍醐味です。
14:45 チャメチプでユッケと生レバーを食す
今回の目当てはこのお店。
有名なお店なので、知っている方もいるかと思いますが、チャメチプという名前のユッケ・レバ刺し専門店です。
そうです。日本では食べられなくなったユッケとレバ刺しです。
わざわざ勝手知ったるソウルに1日滞在したのは、友人と会うためでもありましたが、肉刺しを食べたいがゆえでもありました。
懐かしい感じの壁画が迎えてくれます。
ユッケが1人前で12,000ウォン、レバ刺しとセンマイのセットが1人前でやはり12,000ウォンです。
両方食べたいけど、一人で二人分は食べられないよ、といったところ、「じゃあ、レバ刺しとセンマイ半人前にするから、両方おたべ!」とのことで、提案通り2種類いただくことにしました。
写真がこちらです。
ぶっちゃけ、一人でこんなに食べられないです。
韓国の食堂は、基本的に二人以上を想定していることが多いので、一人で行くと往々にして食べきれないことがあります。
鮮度は素晴らしく、生臭さのかけらも漂ってきませんでした。
特筆すべきは生レバーで、口に入れた瞬間、芳醇な甘い香りが口内を満たし、嚙むとシャキシャキした食感があり、感動もののおいしさでした。
昔日本の焼き肉屋でよくあった、グニャグニャとした血なまぐさいレバーは、鮮度の落ちたものでしたが、これは本物のレバーです。
外は真夏日でしたが、肉は冷蔵ケースに入れられており、店内の温度調整もしっかりしていたので、安心していただくことができました。
個人的には日本で食べる生ガキよりもハラハラ感は少なかったです。
ユッケ一人前とレバ刺し・センマイ半人前、ついでにマッコリ一本いただいて20,000ウォンちょっとでした。
……2千円ちょっと?
トラベルグルメレーティング【#002】 ソウルクァンジャン市場チャメチプのユッケとレバ刺し
- 味:★★★★★
- 栄養:★★★★
- 安さ:★★★★
- レア度:★★★★
- スリル:★★★
総評:★★★★
コメント:日本ではもう食べられない味にもう一度出会えます。生レバーだけでもいいので頼んでみてください。ユッケ禁止以降に生まれた若い人なら人生観が変わるかも。
お店を出てから左へ行くと、市場の北側へと出られます。
出てすぐのところに薬局がやたらあるのはコリアンジョークでしょうかね。
15:30 明日のチケットを買いにソウル駅へ
おなかもふくれたので、余った時間を利用して、翌日の電車のチケットを買いにソウル駅へときました。
今回の旅の大目的は、ソウル駅からプサン駅まで、ローカル列車を乗り継いで途中下車の旅をすることです。
16:00 ソウル駅でムグンファ号のチケットを購入
ソウル駅の乗り場両脇にチケットセンターがありますので、こちらで乗車券を購入できます。
列車の種類を聞かれたりすることがあるので、言葉が不安な方は、あらかじめ便名の載った資料を印刷してハイライトしておくとよいでしょう。
黙っていると、高速鉄道であるKTXの料金を提示されますが、ニッチトラベラーなら黙って鈍行列車のムグンファ号をリクエストしましょう。
いや、黙っていたらリクエストできないんですけどね。
黙って購入するのであれば、隣にクレジットカード専用のキオスクがありますので、こちらを利用するのも楽でしょう。
国内カード用と、海外クレジット専用と別れていますので、海外用を見つけてください。
安心の多言語仕様です。
乗車券を購入すると、写真ようなレシートタイプのものが発券されます。
乗車までなくさないようにしましょう。
とりあえず、韓国中部の都市であるテジョン駅までの乗車券を発券しました。
150km~200kmほどだったと思いますが、10,800ウォンです。
うーん、安いというより、やはり日本の列車は高い。色々な国を旅してきましたが、日本より交通費の高い国は、いまだかつてお目にかかれませんでした。
なお、外国人向けのフリーパスもありますが、普通に南へ向かうだけなら、駅で購入すると半額以下になりますので、素直に出向いて買いましょう。
17:00 友達と待ち合わせのためシンチョンへとバスに乗る
友達とシンチョンで待ち合わせているため、ソウル駅からバスに乗りました。
ソウル駅の大通りの真ん中からバスに乗れますが、間違えるととんでもないことに……
17:45 完全に間違えたためシンソルドンから地下鉄に乗る
何を間違えたかよく覚えていませんが、とにかく乗るべきバスを誤ったことだけは記憶にあります。
お目当てのバス停が行先に載っていたとしても、大回りをしてあべこべのルートを通っていくことがよくありますので、よく注意して乗りましょう。
とにかく、時間がおしているので、手近の地下鉄駅から環状線へと乗り換えることにしました。
このようなときに交通カードを使っていると、一本の路線として扱われるため、基本料金を支払わずに済みます。
間違わないのが一番ですが。
19:00 シンチョン到着
約束を30分超過してシンチョンに到着しました。
友達は地下鉄駅直結の、ヒョンデ百貨店の通路にいるとのことです。
雨がぱらついていたので、街中へ出向くには地下道を通るのが便利だからです。
19:15 友達と合流
見慣れた地下道を通っていくと、サラリーマン風の青年のすがたがありました。
旧友と実に10年ぶりの再会です。
街も変わり、流れた時もまた別でしたが、昔の仲間との再会はよいものです。
途切れた時間が再びつながるような感覚がするのは、私の時が長らく止まっていたことを意味するのでしょうか。
19:30 チンウォンジョタッカンマリで食事
シンチョンの真ん中あたりにあるタッカンマリのお店で食事にしました。
タッカンマリとは、鶏肉と野菜を丸ごと煮込んだスープのことです。
韓国料理の中では刺激も少なく、栄養価が高いため、胃が疲れているときにはよくお世話になりました。
昔から商売しているだけあって、味はお墨付きです。
思い出話に花を咲かせながら鍋をつついていると、タイムスリップしたかのような錯覚に襲われます。
年を取った証拠ですね。
お酒と一緒に食べて飲んで、二人で30,000ウォンほどです。
トラベルグルメレーティング【#003】 シンチョン街中のチンウォンジョタッカンマリ
- 味:★★★★
- 栄養:★★★★
- 安さ:★★★★
- 〆度:★★★★★
- トッピング類:★★★★★
総評:★★★★
コメント:昔から続くお店にハズレなし。寒い冬には特におススメ。元気がほしいあなたはインサム(朝鮮人参)をトッピングしてみましょう!
参考:진원조 닭한마리 (陳さんの元祖タッカンマリ)
20:30 スルインヌンマウルでハシゴ酒
すぐ近くに、これまた学生時代から続く韓国居酒屋があるので、二次会としゃれこみました。
目立った名物はないのですが、韓国の古民家を意識した作りになっており、昔から現地の大学生や留学生に人気でした。
こちらではクァンオ(ヒラメ)のお刺身を注文しました。
韓国のお店では、基本的に生け簀に泳いでいる魚をダイレクトに刺身にしてくれます。
漁師の気分を味わえますね。日本以上に鮮度命といった感じです。
22:00 解散、寝床へと
学生時代よろしく、大いに食べて飲んで解散となりました。
友達を駅まで送った後、寝床のシンチョン リビングテルへと引き返し、ベッドに横たわりました。
昨夜手洗いした洗濯物は、うまく乾いているようです。
記憶の中にある友人と出会ったせいか、昔あったことがフラッシュバックしてきます。
記憶というもの自体は消えなくても、何かきっかけがないと埋もれてしまうのだな、と感じました。
同時に、かつての居場所であったこの街も、今はただの抜け殻に過ぎないのだな、と感じたのもこの夜でした。
23:00 就寝
飲みすぎたせいか、シャワーの後すぐに睡魔が襲ってきました。
楽しかったソウルの思い出巡りも今日で終わり。
明日からは、未知の旅先へと出向かなくてはなりません。
大きな好奇心と、一抹の心細さを抱えながら、今日のお話もこれでおしまいです。
振り返ってみて
何度も行った場所でも、時間が経てばどんどん変わっていきます。
少し寂しい感じもしますが、人も街も、こうして変わっていくのだなとしみじみ感じた一日でした。